紅の月
彼女は必死に声を押し殺し、目を見開いてそっと辺りを見回した。





時が止まったかのように何の音もせず、沈黙が長く続いた。





先ほどのフロントガラスに付いた赤黒い液体がゆっくりと重力に従って流れていく。




彼女はフロントガラスに目を向けた。





彼女はそれが血だと気付いた。





流れ落ちる血の隙間から、さっきの女が見えた。花柄模様に見えた着物は、花なんて綺麗なものではなく、血を浴びたように所々を赤く染めていた。





のったりのったりと女が車の周りを歩いている。
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