チャット★ティチャー
チョキチョキと心地よい音が耳元で鳴っている。

寝不足の俺の眠気を誘った。

鏡越しに真剣な顔で作業する、粟田の顔が映った。

こんなカッコいい人は悩みなんてないんだろうなぁ。

俺はそんな事を考えながら粟田の顔を凝視していた。

するとそんな俺に気がついた粟田を目を合わせ、二コリと微笑んだ。

「どうしたの?僕の顔になんかついてる?」

「いえ、粟田さんはかっこいいので羨ましいなと。」

そんなことないよ、と照れ笑いをして粟田は話し始めた。

「僕は右近君もかっこいいと思うよ。」

「それに僕の顔って女の子みたいじゃん、昔そのせいでいじめられた事もあったんだよ。」

意外だった。

こんなカッコいい人がいじめられた経験があったなんて夢にも思わなかった。

きっとモテモテで、バレンタインには山ほどチョコもらって幸せな学校生活だったんだろうな、と想像していた俺は少し申し訳ない気持ちになった。

「右近君は学校楽しい?」

「俺はいじめられてたから、はっきり言って楽しくなかったよ。」

「でもね、今になって思うんだよ。」

「あの時こうすればよかった、あぁすればよかったってね。」

「学校生活は学生の時は特別なものじゃないんだけど」

「学校を卒業して、社会に出て、仕事をするとね」

「とてもとても特別で一生の中で大切なものだって気づくんだよ」

「不思議だよね、いじめられてて行きたくなかった学校が、今になってはあの頃に戻りたいなんて思うんだから。」



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