短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜





「──こんな時間まで、何してたの!?」



家へ帰るなり、あたしの耳にお母さんの声が響く。






「そ、その傷…何かされたの!?」






「あ、うーん、転んだだけだよ。」






間違っても、"昔あたしがフった男に土下座してました。"なんて言えない。






「転んだだけでそうなる人があるもんですか!、しかも昼よ?もう少しまともな嘘にしなさい。」





お母さんはそう言うと、あたしを玄関にあがらせた。




そして、『何かあったら産婦人科に行きなさい。』と一言言うと、お風呂場まで連れて行ってくれた。








昔からお母さんは、いつだってこうだった。


何も聞かず、一言の助言で終わる。





本当は、知ってると思う。

あたしが過去に、どんな恋をしてきたかも。

次々に変わっていく、彼氏の事も…。



そして、今日。

なぜあたしがこんなになって帰ってきたかも。





お母さんは、全てお見通しなんだよね。
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