タイトル未定

 教室のドアを開けると中は薄暗く、妙な雰囲気を醸し出していた。廊下の明かりがあるとはいえ、やはり少し不気味だ。
 病院や廃屋が怖いというのはわかるのだが、何故夜の学校もこんなに怖いのだろうか――。
 そんな事を思いながら電気を点けると、

「うわっ」

 人がいた。その人は隅の席で机に倒れこむような姿勢をとっていた為、電気を点けるまで気付けなかった。
 思わず漏れた情けない声に落胆しつつ、状況を把握してみる。
 その人物は女の子で、窓側の一番前の席に座っている。座っているのだが、体はくるりと後ろを向いていて、一つ後ろの席――つまり俺の使っている机に長い髪の毛をバサバサに広げて突っ伏していた。なんか孔雀の尾みたいになっている。
 よもや幽霊ではあるまい・・・・・・などと考えつつそろそろと近づき、顔を確認。

 真っ白な肌に、長い髪が僅か張り付いている。上気した頬はほんのりと薄紅色に染まり、長い睫毛がたまにピクリと動く。すーすーと、可愛らしい寝息を立ててその女の子は眠っていた。
 体も小柄なら、顔も小さい。その横顔はとても綺麗で、お姫様みたいで――。
 はっと我に帰ると、数秒見とれてしまっていた事に気がついた。顔が熱くなる。
 誤魔化すように大きく深呼吸をしてから、もう一度その横顔を見た。

 ――綾崎さん・・・・・・だよな。

 どうして教室で寝ているのかとか、どうして後ろを向いて寝ているのかなどの疑問は残るが、時間も時間なのでまずは起こした方がいい気がする。
 しかしどうやって起こそうかと思案していると、むにゃむにゃと綾崎さんの口が動き、

「・・・・・・人類、絶滅したらいいのに・・・・・・」

 なんかとんでもない寝言を聞いてしまった!


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