ふわふわのいた町
名前にした。届けを出しに行ったら戸籍係は違う人だった。でも、あの戸籍係だった人は、ほんの少しだけ奥の机にいた。お父さんとお母さんに気付くと席を立って側までやってきたらしい。
「おめでとうございます。」
と言ってくれた。変わった夫婦のことを覚えていてくれたのだ。
「少しは出世したのかしら。」
お母さんは言った。
「良い人だったもん。」
良い人が必ず出世するかどうかは疑問だ。
と思ったけどお母さんには言わなかった。その後、特に夫婦に離婚の危機も訪れなかったし、子供たちもすくすくと成長した。あたしも中学二年になった。
あたしの住む町の公立中学は二学期制だ。二学期は九月から始まる。だから夏休み明け、しばらくすると期末テストが始まる。夏休みも後半になるとテストのことが段々、頭の中で膨らんできて余り言い気分じゃない。だから、もう少しで夏休みが始まる今の時期は割りと気分は軽い。梅雨空は確かにうっとうしいけど、気持ちが明るいとあんまり気にならない。
でもそれは去年までだった。今年はちょっと違うんだな。灰色の空と同じ、あたしの気分も曇り空が続いてる。
最初はたいしたことじゃなかった。同じクラスのユウコに西高のカレシができた。それ自体はいいの。仲良しの子にカレシができたことは、少し先を越された感があって悔しいけど、いいの。他の子たちも一緒に素直に喜んであげた。だけどユウコって、あたしたち数人の仲良しグループがビックリするくらい一途って言うか、カレシに夢中になっちゃった。付き合いも悪くなったし、メールの返事も遅い。ブログのレスもほとんど無くなっちゃった。あたしだって、時々は思うよ。メールの返事、面倒くさいなって。お互いのブログをこまめにチェックしてレス入れなきゃいけな
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