あの雨の日、きみの想いに涙した。
雑音がなにも聞こえない空間でその声はやけに耳に響いた。
『……私は冴木くんが好き』
繰り返すようにもう一度女は言った。
女は恥ずかしそうにうつ向いて、少しだけ体が震えていた。真っ赤に染まった顔を見て俺の中でなにがが切り替わった。
一番無縁で、一番遠い所にいるはずだった女が一気に俺に近づいてきた。
一瞬で切り替わってしまった。
関わりたくないと。
だって誰がどう見てもこの女は軽はずみでこんなことを言ってない。俺の答えは簡単だった。
いつもの口癖、いつものように言った。
『面倒くさい』
その瞬間、女は顔を上げた。
その顔はなんとも言えない切ない顔をしていた。
俺はなにか言うわけでもなく、そのまま靴を履いて外に出た。
俺が一番面倒だと思う女は本気の女。
あの女は本気だった。
だからこそ面倒だった。
誰かを傷つけても、あんな顔をされてもなにも感じない。
拒絶することより、受け入れる方が俺にとっては罪悪感だ。
なにもしてやれないのに。
なにも感じることができないのに。
だったら拒絶して、ひとりでいたほうがずっとずっとラクだった。