べガとアルタイルの軌跡
槙原くんの視線が、奈々美ちゃんを見てから、私を見た。

あっ、機嫌悪そう。



「勤務中、私語は慎むように」

「えー……槙原さん、この際だから訊きますけど、竹下さんと付き合ってないんですかぁ?」

「『ただの』バイト仲間だけど、それが何か?」

「あっ、いえ、なんでもないです」



いつもより低い声色に、奈々美ちゃんはそう返答して黙り込んだ。



今、『ただの』を強調して言ったよね?

私が『ただの』って言ったから、怒ったの?

だって……それ以外、言いようが無いじゃない?



この日から数日、槙原くんは機嫌が悪かった。

何かあると『ただのバイト仲間だから、関係無いけど』と付け加えて言うようになった。

やっぱり、それで怒ってたんだ。

この日から、ちょっとだけ、居心地が悪くなった。



でも、事態が急変する。



私の内定が決まった会社から連絡が来て、急遽辞めた人がいて人員不足になったので、出来れば今から3月までバイトとして仕事を始めてもらえないか……と言う事だった。

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