好き!嫌い!好き?
「貰うよ。サンキューな」

そう言って先輩はあたしの手から飴をとると、立ち上がった。

あたしはすかさず答える。

「いえ…こんな物、いくらでもあるんで…」

「そうなんだ。……俺、そろそろ部活行かなきゃだから行くね」

…部活…そうだよね。朝練あるに決まってるよね…。

「が…頑張ってください!」

「ありがとう。俺は斎藤大樹。サッカー部だから応援よろしくな」

先輩はそういうと、走って教室からでていってしまった。

…まだ自分のこと…何も言ってなかったのに…。

でも、言ったってきっと意味がないだろうし…。

だってもしかしたらもう二度と会わないかも知れない人だよ?

斎藤大樹先輩か…。
どうしても見ず知らずのあたしにあそこまでしてくれたんだろう…。

ただの偶然…?
それともあたしに何かあるの?

分からない。
何故か気になってしまう理由が。

先輩が、あたしに関わった理由が。

それが分かる日は来るのだろうか…。



………。
…………。

その日の放課後。

帰りのホームルームが終わり、部活に入ってないあたしは真っ先に家に帰ろうとした。

グランドからはたくさんの声が聴こえる。

運動部はさすが、元気だなぁ…。

そう思っていた時だった。

「大樹ーそっちいったぞー!」

知らない人が呼ぶその名前は今朝のあの先輩のもの。

あたしはとっさにグラウンドのほうを見ていた。

ザンッ

勢いよくゴールするボール。

かなり汗をかいているはずなのに、ゴールを決めた先輩は笑顔で。

何故かその笑顔にキュンとくる。

いつの間にかあたしは先輩のプレーに見入っていた。

………。
…………。

ザワザワ…
ザワザワ……。

んっ!?なんか騒がしい…。

ふと気がつくと、サッカー部の人達がぞろぞろとこっちに向かって来ていた。

やだ…嘘っ!こっち来る!?

みんなが見てる…。

やだ…目立ちたくない!!

大樹先輩に気づかれたくない!!

あたしは力の限り校門目掛けて走った。


誰も気づきませんように…そう願いながら…。
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