好き!嫌い!好き?
そんな優美の声も気にせずあたしは走る。

階段を駆け降りる。



ドンッ

『キャッ』

『わっ』

何かにぶつかった。

…壁?じゃないよね。

…痛いけど…痛くない…

これは何?

「君…大丈夫?」

「はっ…はい」

あれっ…?この声は…もしかして…

聞き覚えのあるその声。

ゆっくりと顔をあげるとそこにいたのはやっぱり大樹先輩で。

「大…樹先輩…??」

「あれっ?もしかして昨日の…」

「…はい。昨日は本当にありがとうございました」

「平気だってあんなの…。それはいいけど…廊下は走るなよ?危ないし、もし、ぶつかったのが俺じゃなかったらどうなってたかわからないよ?」

「…気をつけます」

「じゃあ俺はそろそろ行くね」

そう言って先輩は廊下をゆっくりと歩いて行った。

「桃花」

「……」

「桃花ぁー?」

「……」

「桃花っっ!!」

「…へっ!?」

優美の声で我にかえるあたし。

あたしはぼーっと立ち尽くしていたようだ。

「…へっ!?じゃないよ…。…ねぇ、さっき大樹先輩と話してたでしょ?なに話したの?教えて!」

「やっ…別にそんな大した内容じゃないし…」

「良いじゃん。教えてよ!昨日のこともね」

「ここで?今?そろそろ時間やばいと思うよ?授業遅れちゃう」

「うーん…それもそうだね。じゃあ放課後、教室でね!」

「……うん…」

「絶対だよ!!…じゃ、教室戻ろっか」

「うん……」

なんでそんなに知りたがるのかなぁ…。

別に…知らなくても良いのに…。

そんなに重要なことでもないのに…。

「はぁ…」

優美に聞こえないよう小さく溜め息をつく。

なんか憂鬱。

やだな…放課後にならないでほしい。

でも、やだって思ってる時ほど、時間が流れるのは早いんだよね…。

なんでかは知らないけど…。さすがに…。

< 9 / 13 >

この作品をシェア

pagetop