君と手を繋いで
「ほら、噂をすれば来た。
じゃ、私はとばっちりが来る前に先帰るわ」


「え!?ちょ、待ってよ!!香!!」


私に背を向ける香を追いかけようとしたら
宮っちに襟首を掴まれた。


「お前は帰らなくていい。」


そろーりと後ろを振り返ると、そこには鬼の顔をした担任宮っちがいた。


「あははは…宮っち…」


「誰が宮っちだ。宮林大先生と呼べ!!」


「はぁ……」


私は呆れたような軽い返事をする。



「お前、何で俺様に呼ばれてるか、わかるよな?」


えぇ、わかってますとも。
今日放課後残れって言われてるのに、今鞄持って帰ろうとしてるからでしょ?


でも、私はそうは答えず、
「いえ、さっぱりわかりません。」
ときっぱり答える。


そんな私によほど腹が立ったのであろう宮林大先生(本人談)は、こめかみに血管を浮き立たせてまくし立ててくる。


「しらばっくれるな!!胸に手を当てて思い出せばお前が一番よく心当たりあるだろうが!!」


そう言われたので胸に手を当てて、思い出すフリをするため天を仰ぎ、一瞬考えたような表情(かお)をすると、再び目の宮っちを見て言った。


「いえ、先生に言われた通り胸に手を当てて思い出してみたけど、心当たりは一切ありませんでした。」


それに対し、宮っちは、
「お前は馬鹿か?やっぱり正真正銘の馬鹿だったのか?」
本気で馬鹿な子を見るように、哀れんだ顔で見てくる。


失礼な先生だ…。


むっとした私は、
「そうです。私しょーしんしょーめーの馬鹿なんです。だから思い出せないんで帰っていいですか?」
と、わざと正真正銘のところを棒読みで言うと、話は終わったというように教室を出ようとした。





が。



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