princess~私の宝物~
あっ。

そこには利香が立っていた。パジャマ姿。顔には血気がなくて、うつむいていた。

利香は私の顔を見るとゆかに崩れ落ちて、今までのチカラが全部無くなったように泣いた。

「うわぁ~~ん」

「利香・・・・」

何だか私も泣きたくなったけど、涙を必死にこらえた。

何も言えず、私達は家の中に入った。

利香は変わらず泣いている。

「利香・・・。何があったの?教えて・・・?」

「グスン。あのね・・」

濁声で利香が言った。

離婚する前の日。

お母さんとお父さんが大喧嘩をした。

それでお父さんがお母さんに、思いっきりガラスの花瓶を投げた。

お母さんは大怪我。利香には何事もなかった。そして離婚して、お父さんは他の地方に引越しして、利香とお母さんがココに残ったらしい。

お母さんは今入院中。利香はお母さんのお見舞いに行きながら、一人で家にいたらしい。



「大丈夫・・・。大丈夫・・・。大丈夫」

利香はずっと涙を流しながらこの言葉を言った。

離婚して親が離れて、悲しくないわけがない。

利香のココロの悲しさは誰にも気付かれないまま、ずっとずっと、大きくなっていたんだ。

私が利香のところへ行ってあげてなかったら、利香はずっと孤独だったはず。

私は利香をギュっと抱きしめた。

言葉なんていらない。

悲しさを包みこむように私は精一杯の「愛」で利香を抱きしめた。

< 82 / 138 >

この作品をシェア

pagetop