ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



途切れることなく打ち上げられる花火。



ここからは、やっぱり見えないけど。



1人で見るくらいなら、見なくていい。



いつか2人で見たいから。



夕陽をおいしそうだと笑った君は、今度はなんて言うんだろうか。



――――“ドーンッ”



この場から動けないあたしは、ただ聞こえてくる花火の音に、耳を傾けるしかなかったのだった。



ワンはいつ、あたしを見つけ出す?



「そこのお姉さん、小さい坊やと一緒じゃないんですね」



……?



花火の音で、人の気配に気付かなかった。



顔を上げると、階段の下から、見覚えのある整った顔がこちらを見ていた。



「…なんだ、来れたんだ?」



佐倉だ。



「まーね」



そう返事をした佐倉は、あたしよりいくらか低い段に腰を下ろした。



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