ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



そのワンが、息を切らしてる。



探してくれてたんだ。



この人込みの中、見つかる可能性の方が低いのに。



大好きな屋台もそっちのけで。



多分花火だって、見てないと思う。



もう、この犬は。



いつだって、自分を犠牲にするんだから。



屋台も店をしまい始め、人の数も少なくなっていく。



「…ごめん」



俯いたワンが、小さな声で発した言葉。



「気付けなくてごめん。それと、怪我させてごめん。オレ…」

「ワン」



まだなにか続けようとするワンの言葉を、あたしは無理に遮った。



怪我した足に気付かれたのは、少し驚いたけど。



だけど、謝ってほしいんじゃない。



だって、ワンが悪いことは1つもないから。



あたしが言いたかったのは、



「ありがとう」



探してくれて。



見つけてくれて。



気付いてくれて。



諦めないでいてくれて。



それだけだ。



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