ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
――――“カツカツ”
ふと、足音が近づいてきているのに気がついた。
下駄を履いているような、そんな音。
周りの雑音に紛れながらも、確実に音は大きくなる。
恐怖心なんてなくて。
確信があった。
姿を見る前から。
「稀衣ちゃん!」
ほらね、やっぱりそう。
乱れた呼吸。
額に光る汗。
片手には鼻緒の切れた下駄。
「やっと見つけたぁ…!」
間違いなく、ワンだ。
「気付いたら、稀衣ちゃんいないから。さらわれちゃったかと、思って…!」
ワンの呼吸が乱れたところを、あたしは初めて見た。
スポーツだけは、なんでも容易にこなしてしまうワン。
もちろん体力だって、誰にも負けないほど、持ってるはずなのに。