アリスズc
∴
「これはこれは…殿下」
神殿に入り、ハレがホックスと控えの間に案内されている時──そんな声がかけられた。
ヤイクだった。
昔の印象より、もっと髪が短めになっているが、それ以外はさして変わった様子はない。
この旅路で、一番変わらなかった者と言えば、リリューか彼かのどちらかだろう。
「神殿への到着、心よりお喜び申し上げます」
丁寧な言葉を並べながらも媚びることはなく、目はハレと彼の文官を見つめている。
見るというより、見抜こうとする目。
「ありがとう。そちらも全員無事で何よりだね」
「ひとつ…お伺いしたいことがあるのですが」
社交辞令の挨拶など、形だけで終わりだと言わんばかりに、ヤイクが話を切り出す。
ハレにしてみれば、意外な展開だった。
彼については、宮殿にいる時から善悪関わらず伝え聞いてはいたが、直接懇意に話をする間柄ではなかったのだ。
「どうして…私を選ばなかったのですか?」
ホックスの目の前でも、まったく臆する様子もない。
おそらくヤイクの目からすれば、彼の価値はさほど高値ではないのだろう。
そして。
どうして自分がテルの従者になったのか、そのきっかけを弟から聞いたのか。
「私にしてみれば、あなたの方が楽だったのですがね」
ニヤリと、笑う口元。
太陽の息子を捕まえて、『楽』なる言葉を平気で吐ける心臓。
ヤイクにとっては、テルの方が扱いにくかった、ということか。
それらを駆使して、ハレの真意を探ろうとしている。
何故、自分をテルに譲ったのか、と。
彼に真意を悟られれば──テルに伝わるだろう。
だが。
頃合いかもしれないな。
お互い、無事に神殿にたどり着いた。
大きな障害も、取り除いた。
すぅっと、ハレは息を吸う。
「卿は…賢者になるべきだと思ったからですよ」
言葉の裏側を読み取るヤイクの目に。
己の瞳の中を覗かせた。
「これはこれは…殿下」
神殿に入り、ハレがホックスと控えの間に案内されている時──そんな声がかけられた。
ヤイクだった。
昔の印象より、もっと髪が短めになっているが、それ以外はさして変わった様子はない。
この旅路で、一番変わらなかった者と言えば、リリューか彼かのどちらかだろう。
「神殿への到着、心よりお喜び申し上げます」
丁寧な言葉を並べながらも媚びることはなく、目はハレと彼の文官を見つめている。
見るというより、見抜こうとする目。
「ありがとう。そちらも全員無事で何よりだね」
「ひとつ…お伺いしたいことがあるのですが」
社交辞令の挨拶など、形だけで終わりだと言わんばかりに、ヤイクが話を切り出す。
ハレにしてみれば、意外な展開だった。
彼については、宮殿にいる時から善悪関わらず伝え聞いてはいたが、直接懇意に話をする間柄ではなかったのだ。
「どうして…私を選ばなかったのですか?」
ホックスの目の前でも、まったく臆する様子もない。
おそらくヤイクの目からすれば、彼の価値はさほど高値ではないのだろう。
そして。
どうして自分がテルの従者になったのか、そのきっかけを弟から聞いたのか。
「私にしてみれば、あなたの方が楽だったのですがね」
ニヤリと、笑う口元。
太陽の息子を捕まえて、『楽』なる言葉を平気で吐ける心臓。
ヤイクにとっては、テルの方が扱いにくかった、ということか。
それらを駆使して、ハレの真意を探ろうとしている。
何故、自分をテルに譲ったのか、と。
彼に真意を悟られれば──テルに伝わるだろう。
だが。
頃合いかもしれないな。
お互い、無事に神殿にたどり着いた。
大きな障害も、取り除いた。
すぅっと、ハレは息を吸う。
「卿は…賢者になるべきだと思ったからですよ」
言葉の裏側を読み取るヤイクの目に。
己の瞳の中を覗かせた。