白球追いかけて

　三月。春休みに入り、センバツの時期がやってきた。
　しかし、オレたちにとってはいつもどおりの日常。ストレッチをして、グランドを五周走って、ノックがはじまる。監督が目をそらした隙に、愛嬌のある安川はプロ選手のまねをして、軽快なグラブさばきをする。少しヒヤヒヤもしたが、オレたちは練習の中でのスリルを楽しんでいた。
　そしてフリーバッティングが終ると、ミーティングのための円陣を組む。監督を中心にきれいな半円が描かれる。プリッとしたおしりの集団が描く弧は見た目がいい。その中で監督がセンバツの話をはじめる。
「彼らもお前たちと同じ高校生。その高校生が‥‥‥」
　なんとかかんとかと続く。
　その両端にオレと安川がいて、向かい合っている。真剣な話の中でも、お互いなにかを言いたそうな目をしていた。