白球追いかけて
 昼食後、いつもなら眠くなるのに、その日は不思議と目が覚めていた。しかし、ずっとぼぉ~としていた。
そのぼぉ~とした波長をプチリと切ったのは、日本史の先生だった。
「はい、瀬谷、次読んで」
「んっ?」
 隣の剣斗に聞いてみると、笑みを浮かべながら百三十五ページを開けて指差す。
 百三十五ページを開き、読む。
「当時の江戸幕府は‥‥‥」
「瀬谷、どこ読んでいるんだ。七十九ページの六行目からの段落」
 眠りに落ちている生徒は気づいていなかったが、クラスの数人はクスクスと笑っていた。やりやがったなと剣斗をにらむと、さっきの笑みは、悪ガキの笑みになっていた。
「瀬谷、ちゃんと聞いているのか?じゃあ、さっき説明した東大寺の存在意義を言ってみろ」
「トウダイジ?あっ、あの寺ね。え~と、あれは修学旅行の観光名所で‥‥‥」
 また数人がウケていた。先生は笑顔にあきれ顔を混ぜて、疲れた表情でこちらを見ている。オレもなんか疲れた。
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