白球追いかけて
 なんとなくその日は過ぎていった。雨で練習が早く終わり、いつもより早く家に帰ると、普段は見ない夕方のニュースをつける。「○○党は次の選挙に向けて‥‥‥、現在の年金制度は‥‥‥」政治や経済のニュース。さっぱりわけはわからなかったが、普段見慣れていないだけに、そこに映る映像はどこか新鮮味があった。そしてぶっそうな事件が終わって、スポーツニュースがはじまった。
 プロ野球選手がインタビューされていた。
「この芝生の感触と匂いが最高に気持ちいいんです」
 テレビでは、選手のバックに映る青々とした緑がとてもきれいだった。華やかなプロ野球。同じ野球なのに、そんな環境でプレーしたことがないオレたちとは、世界が全く違う気がした。
 CMが終わると、いよいよ明日の天気予報だ。
 明日の予報を見ると、くもり時々雨。午前の降水確率は三十パーセント、そして午後は五十パーセント。試合は午前。グランドがある程度乾けば、明日の試合はある、そう確信した。
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