彼はチョコレートが嫌い
ビターチョコレート

溶ける

「うっそ、信じらんない…」
じりじり照り付ける陽射しの中、あたしは思わず呟いた。

体温より高いんじゃなかろうかという気温の中、
見事なまでに日蔭のないアスファルトに座り込みそうになる。

かろうじて座らずにいるのは、自転車に乗っているからで、
座り込みたくなる原因も自分の自転車にあった。

目の前には、なだらかな、それでいて長い下り坂が伸びている。

あたしの自転車は、前輪がペッタンコ!

何を轢いてしまったのか、パンクしてしまっていた。

慌てポケットから取り出した携帯は電池切れ。

今日に限って親友の絵里と長電話しちゃったからだ。

そして私の家は町外れなので、通学路は路線バスのエリアにはなく、もちろん電車もない。

公共交通機関を利用する機会がないような土地に家を買ったパパが恨めしい。

「ついてないなー」

あたしはため息をついて自転車を降り、のろのろとハンドルを押して歩き出した。


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