彼はチョコレートが嫌い
いつもなら気持ち良い下り坂も、今は辛い。

なかなか変わらない景色の中、たまに追い越していく車が羨ましい。

こんなときに誰か通りかかって乗せてくれればいいのにな。

そんなことを思って、ハンドルを握りなおしたとき、真っ黄色なスポーツカーが視界の隅に映った。

首都圏とはいえ、のどかな(のどか過ぎるともいう)
水田の広がりまくるこの辺では、激しく不似合いな、すごく目立つ車。

流線型のボディはカッコイイ。というより、美しいという言葉のほうが似合いそうだ。

___ここがイタリアだったなら ね。

なんじゃありゃ、乗りたくないと思った途端、追い越すと思っていた車が突然あたしの速度にあわせるようにスピードを落とした。

「?」

怪訝に思って車を見ると、スモークを貼った窓が
ウィーンと音を立てて下がる。

いまどき、こんなに音がする車もないよねと思った途端、若い男の顔が現れた。





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