彼はチョコレートが嫌い
「さーちゃんじゃない?久しぶり!」

明るい声と、人懐こい笑顔。

顔はかなりカッコいい部類に入ると思う。
すれ違う女の子は皆振り返るだろう。
柔らかそうな髪の色は、チョコレート色。

イケメン好きではないけど、うっかりドキッとしてしまう。
ちょっとどこかで見たことがあるような、ないような…。
でも、とりあえずあたしの身近な知り合いにはいないタイプ。

ドキッとしてしまったけど、私はとりあえず返事をすることにした。


「さーちゃん・・・じゃないですけど」

一瞬、自分がさーちゃんという人だったらいいなと思うほどカッコいい。

あたしは残念そうな声にならないように気をつけた。

「あっれ、ごめん。知り合いと間違えちゃった」

あたしの戸惑いに慌てて答えた相手は、二十代前半くらいに見える。

声も耳馴染みのよい、優しい声。

いかにも女の子が群がりそうなタイプだ。

ほんわかとした雰囲気と真っ黄色なスポーツカーという組み合わせがちぐはぐな印象だけど、なかなかお目にかかれない人種を、あたしは思わずガン見してしまった。




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