誘拐 ―おまえに決めた―
「俺の両親はある交通事故で死んだ」
それは衝撃的な言葉から始まった。
全く、予想外の。
「いや。事故、じゃないな。殺人だな。」
殺人という言葉に、私はおもわず息を飲む。
「なんで、分かるの?」
「俺の伯父が、父の車のブレーキに細工を施したからな。祖父の相続目当てでな」
「父の車の事故は、お前の親の車も巻き込んだ。マイの親の車はその衝撃で電柱に激突。マイの両親は死亡」
私の本当の両親はもうこの世にいない。
予想していたこととはいえ辛い。
「だが、お前は運よく生き残ることができた。だがそのせいで、子供の頃の記憶がないはずだ。マイはある施設に預けられることになる」
「確かに、施設にはいたけど」
リクの言うようによく覚えていない。