誘拐 ―おまえに決めた―

「これは庭師から聞いた話だが、そんな祖父が嫌で父は使用人だった母と駆け落ちした。だから祖父は自分の息子、俺の父親を母が奪ったと思っている。

財産目当てでたぶらかした、憎い女だと。『使用人の子供くせに』ってね、よく言ってたよ。そんな女の息子である俺のことも好きなわけがない。結局、ただ跡取りが欲しいだけだったんだよな」





私の義理の父親も使用人に対しては酷い態度だった。


だから分かる。

一部のお金や権力を手にした人間の持つ恐ろしい万能感を。