誘拐 ―おまえに決めた―
「だが現場に行ったときには、やつらの準備は万端だったよ。もう止められる段階ではなかった。クルマには銃が突き付けられていたしな。俺の姿を見たトイチに。
俺は従った。トイチの命令に。もしかしたら、両親を殺した伯父への恨みもあったのかもしれない。今となってはそう思う」
言いながら、リクは涙した。
「俺は身勝手な人間だよ。銀行であの子の父親を殺してしまった。俺が直接手を下したわけではないけれど、世間から見たら一緒だろ。知らなかったなんていい訳はできない」
リクの瞳が痛い。