誘拐 ―おまえに決めた―
そしてリクは小さい声で言った。
「ただ女児はなぜか謎のルートで貰われていくことが多いのを知ってたから、俺はお前のことを忘れたことなかったよ。心配で心配でたまらなかった。
そのうち施設に未だ俺が行っているのが祖父にばれて、お前を探すことはできなくなってしまった」
そう、涙声で。
港が見えてくる。
じゃりじゃりと足に触れる砂が徐々に少なくなっていった。
人々の喧騒が近づいてくる。
コンクリート。
社会。
そして非現実的な時間が終わりを告げている。
リクは私の手をより一層強く握った。