19の夏~私の愛した殺人鬼~
ネコは右手を高々と上げ、左手でその手首を強く握り締めている。
ひどく痛むのか、表情がゆがんだままだ。
一瞬、ネコの周りだけ真暗なモヤが立ち込めたかと思うと、右手の甲にはナイフで横に切られたような傷跡が浮かびあがってきたのだ。
それは徐々にミミズ腫れのように膨れあがり――。
「死者の魂を、俺に見せてくれ」
ネコがそう言うと同時に、手の甲の傷跡はパッと見開かれ、ギョロリとした大きな黒目がそこに現れた。
幸也は一瞬息を飲み、それでもネコから視線を外さない。
沙耶香は相変わらず幸也の胸に顔をうずめたままで、ネコを見ようとはしなかった。