たぁ坊とるぅ *32page*



フロアを下に見て、

賑やかなブラスバンドとチアリーディングの応援歌に、それぞれの声援が飛び交う。


私たちは何故か、

“来客用”

と書かれた最前列の席へと通された。



「ほら、居たよ」



ランちゃんの声に、恐る恐る下を覗けば……


ーー‥居た。



無駄にバカでかい坊主の姿。背番号は‥10。




「たぁ坊ーっ!!」



元気に手を振りながら叫んだ、よく通るランちゃんの声が、周りの応援をすり抜ける。


それが聞こえたのか、
10番がゆっくりとこちらを見上げた。





ーーーっ、





ズルイ。
‥ズルイよ。


なんて楽しそうに手を振るの。

なんて嬉しそうに笑うのよっ。



胸もお腹も、きゅぅぅんって縮まって

……苦しいっ。




「ほら、始まるよ」




もう1度、前を見ると


ブザーの音と共に、オレンジ色のボールが

ふわっと空に浮いた。



< 9 / 32 >

この作品をシェア

pagetop