たぁ坊とるぅ *32page*
試合はとても白熱していて、点なんか取っては取られてのシーソーゲームだった。
キュッキュッと鳴るシューズの音と、ダムダムとしたボールの音が、私をその世界に引き込んでいく。
両校とも応援に熱が入り、団結していた。
「たぁ坊ーっ打てーっ」
「いけーっ」
「ナイッシュー」
「止めろーっ!!」
「あー‥」
「おー!!」
背の高いアイツは、なかなか活躍していて。
アイツがボールに触る度に、ドキドキした。
そして
最後の第4クォーターに入った途端、
ピピーーーッ
ホイッスルが高らかに鳴り響く。
倒れた背中に見えたのは、10番の文字。
「たぁ坊!」
「たぁ坊ーっ」
「大丈夫か」
「たぁ坊!!」
ランちゃんもみんなも、大きな声でアイツの名前を呼ぶ。
結構な衝突だった。
シュートを構えて飛んだアイツを、抑え込むようにされたファール。
肩を借りながらベンチに戻ってくるアイツは、少し足を引きずっていた。
私はたまらず、席を立って、柵にしがみつく。
すぐ下に居るのに。
声を出せば届くのに。
その声が……
詰まって出てこない。