春夏秋冬
一度目の春
「今年も桜が咲いたな…」
大学のキャンパスで優は桜の木を見上げ呟いた。
大学に入学してから二度目の春。両脇に桜の木が並び、風が吹けば桜の花びらが散り桜吹雪が起こる。
他の生徒はそれに感動したりしていたが、私は特に何も思わなかった。
確かに綺麗だと思うが、ただそれだけだ。季節は巡るし、春は生きていれば何度でもやって来る。だから、そんなに感動はない。
何も思わず桜を見ていると、突然声をかけられた。
「あの、小笠原さん」
「はい?」
振り返ると、同じ大学の生徒だろうか、一人の女性が立っていた。見た事はないが、まずまずの美人だ。
優が振り返ると、その人は何も言わず持っていた小さな手紙を差し出して来た。
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