走り出す、恋。





「おれ、草平」




おずおずと、彼の手を握る。




「あっ…わたし、桃子」





彼がわたしの手を
ぎゅっと握り返すと同時に、電車がホームに滑り込んで来て、風が吹いた。




ブレーキの音で、アブラゼミの鳴き声が一瞬消えた。






「よろしく、桃子」




警笛と共に閉まったドア。





夏の風を追いながら、わたしと彼を乗せた電車は走り出す。





わたしの恋と、競争しながら。









《おわり》



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