ちよこれいと
あたしが好きな匂いが
いま、あたしを包んでる。
「なん、で……」
まわされた腕をキュッと掴む。
なんで、なんで。
なんで……追い掛けてきたの。
疑問はいくらでも浮かんだけど、
この腕を離したくないとも思った。
「まだ……わかんねぇの」
いつもより近くで聞こえた
低くて擦れた声に、少し心音が早くなる。
「わかんない……」
「バカじゃねぇの」
「おめーもバカだろ」
「はぁ!? 夏海のほうがバカだろ!」
「奏悟の方がバカでしょ!?
おまけにアホだし間抜けだし!」
怒鳴り声とともに
少し緩んだ腕を振りほどき
後ろに振り向いて睨みあげる。
「オメェはドジだろ……」
苦笑いを浮かべた奏悟と目が合えば、
スッと伸びてきた手に涙を拭かれた。