♂GAME♀
過去を振り返らず、真っ直ぐ未来を見据えて進む。
ビルの入口に向かう輝の姿は、そんなように見えた。
『少しだけでもお話を!!』
『輝さん、お父様に対して何かメッセージを!』
裏口も使わず正面から行くから、案の定マスコミに掴まってしまった。
『そちらのお嬢さんは輝さんの恋人ですか!?』
そう言って、私にマイクを向ける人もいる。
人の目がこんなに恐い物だなんて知らなかった。
今までニュースやワイドショーでコメントしてた人達を軽く見ていた事を反省……
こんなにギラギラとした目を向けられたら、震えて声が出ないよ。
『こいつの事は関係ねぇだろ』
と、周囲のざわつきを一掃するように、聞き慣れた声が響く。
『メッセージなんて伝えてくんなくていいよ。 本人に言うからさ』
な……
なんて強いんだろう。
私なんて、震えた足で立ってるので精一杯。
それなのに、こんなに堂々と自分の意見を……
『つか、これ全部生中継してんの?』
輝はそう言いながら、一人のカメラマンの前にズイッと顔を出す。
『な、生中継……です』
さすがのカメラマンも動揺してるみたいだ。
『じゃあメッセージやるよ。 「今から全部聞きに行くから」って』
なんだか輝に隠してた私って馬鹿みたい。
こんなにも強い人だなんて知らなかったから……
『そんなわけだから、すんなり道開けてくんない?』
圧倒されたのは、私だけじゃない。
リポーターもカメラマンも、記者も……
皆がシンとして道を空ける。
それはまるで、輝に用意された花道のようだった……