♂GAME♀

誰もが口を閉ざし、室内には沈黙が続く。

それを破ったのは、他でもなく中林社長だった。

『すまないが…… 輝くんと2人にしてもらえるかな』

野田さんと私を交互に見回し、寂しく笑う。

『出ましょう、綾香さん』

野田さんはそう返事すると、私の肩にポンっと触れた。


納得は……出来ない。
だけど、中林社長はきっと輝だけに伝えたい事があるんだと、渋々部屋を出た。



扉を閉めてしまえば部屋の中の声は聞こえない。

何を話しているんだろう……

気になって仕方ないよ。


『社長は本当に輝さんを必要としていました』

と突然、野田さんが呟く。

『社長には、もう他に頼れる人がいませんから……』

意味深な言葉に返答が返せない。

どういう意味なのか、考える事さえ出来なかった。


しばらくの沈黙が続き、輝が姿を現すまで重苦しい空気が漂っていた。




『綾香。 せっかくだから観光していこうか』

部屋を出るなり、そう言う輝。

中林社長と何を話していたか。
それを知りたかったのに……


『外はマスコミでいっぱいだろう。 裏口を教えよう』

輝に続いて出てきた中林社長が言った。

『来なさい』

スーツをなびかせ、背を向ける。

その姿は、未来の輝を予感させた。

似てる容姿のせいだけじゃない。

もしかしたら輝に出会った頃に感じた、人を引き寄せる空気かも知れない……

そう思った。
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