♂GAME♀
『ご、ごめんね?』

指輪を断ったからか、少し輝は不機嫌。

でも、だからと言って百万近くする指輪なんて買わせられないし……

『別に謝る事じゃないよ、気にしないで』

そう言って笑ってくれるけど、やっぱり気になる。

それにしても、何でまた急に指輪なんて?

『綾香。 服でも見がてら戻ろっか』
『あ…… うん……』

元々、突拍子のない奴だったけど、相変わらずだなぁ……




それから服を見たり靴を見たり、
特に輝の機嫌が悪いとかもなく、時間だけが過ぎていった。



『いっぱい買ったね~。 しばらく節約しなきゃ!』

両手いっぱいになった紙袋には、来シーズンに着る洋服達。

可愛いものが沢山ありすぎて、入ったばかりの給料で買ってしまったわ。

『最初に買ったやつ、俺好み! 遊びにくる時に着てきてよ』

いつの間にか、いつもの調子の輝。
満面の笑みで言った。

『うん、絶対に着てくよ!』

名古屋に行く時は、輝が自慢できるように可愛くしていく。
それは、ずっと思っていた事だった。


『さて、そろそろ行くか』

腕時計を見ながら言う輝。

気づけば、もう5時を回っていた。


もうこんな時間か……
日付が代わる頃には、輝は列車の中にいなきゃいけないのに……


時間って、こんなに早く進むものだったっけ?


『次はいつ来るの?』

帰り道、真っ赤な夕焼けが照らした輝の顔は、少し困った様子。

きっと次に会える日の目星がつかないんだろう。

『まぁ、この数ヶ月で、待つのが得意になったけどね!』

あまり困った顔するものだから、冗談混じりに言うしかなくなった。


『ねぇ、綾香』
『うん?』
『少し目を閉じててくれる?』

輝は私の左手に指を絡めると、そう言って少し笑った。

『早く』

深く考える間もなく、急かされるように目を閉じる。

と、途端に指にヒヤリと冷たい感触が……


『……指輪……?』

その答えを早く知りたくて、すぐさま目を開ける。

やっぱり、薬指にキラキラと輝く指輪が……

しかも、

『これ、さっきの……』
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