♂GAME♀
… …何だこれ。
どういう状況なわけ?

黒いスーツを綺麗に着こなした女性が、私の指にシルバーの輪をはめていく。

大きい輪から順に、ぴったり入る輪を探しているみたいだ。

『あの、これって… …』

何となく予想はついたけど、恐る恐る輝を見る。

『見りゃわかるだろ? 綾香の指のサイズ測ってんの』

素っ気なく応えると、またショーケースに視線を移す。

まさか、輝の買いたかったものって……


『お待たせいたしました』

店員さんがそう言って輝に笑いかける。

どうやら、サイズを測り終えたようだ。


『綾香。 こん中でどれが好き?』

ショーケースの中から出されたのは、3つの指輪。

シンプルなシルバーリング。
ダイヤの着いたリング。

もぅ1つは何だろう?
ピンクの石を花に見えるように配置してるみたぃ……

可愛いけど、全部値段が高い!!

まさか、こんな高いものを買おうとしてるの!?

『どれが気に入った?』
『え、どれって言われても…… 』

こんなの買わせられないよ!!

『決まらないなら、一番高いやつにするよ』
『は!?』

な、何言っちゃってんの!!

『い、要らないってば、こんなの!!』

ダイヤの指輪に伸びた輝の手を払いのけ、指輪から目を反らす。

『ほら、ピアスとかもあるし! 私そっちのが…… 』

そう言って、隅にあるお買い得コーナーへ向かう。

2、3千円のピアスがいっぱいで、しかも可愛い!

輝の気持ちは嬉しいけど、さすがに百万もする指輪を買わせられないし… …

『あ、ほら、これ可愛いよ!』

輝の腕を引き、花がモチーフのピアスを見せる。

よく見たら、さっきの指輪に似てる。
このピンクの石も… …


… …あれ?

ふと輝の返事がない事に気づく。

『輝? 可愛くない?』

もう一度訪ねるが、頷くだけで話に載ってこない。

もしかして……
怒ってる…… ?

私が指輪を選ばなかったから?

『… …ごめん。 怒ったよね? 』

確かに感じが悪かったし、店員さんの前で輝を傷つけた。

『別に… … 綾香が気に入る物がないなら仕方ないしさ』

少し笑顔が戻るけど、やっぱり何となく寂しそう。


せっかく久しぶりに会えたのに… …
どうしてあんな可愛くない事言っちゃったんだろう……
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