♂GAME♀
『お疲れさまでした!』
就業時間。
私は同僚たちに挨拶を済ませ、勢いよく飛び出した。
『お疲れさま。初出勤は、どうだった?』
会社の喫茶室で待ち合わせ。
『皆すごく良くしてくれるよ』
私の答えに輝は嬉しそうにする。
本当は輝と同じ部署が希望だったけど、それは男性のみの部署という事で断念。
でもまぁ、同じ会社ってだけでもサプライズになったよね!
『この後どうする? うちに来る?』
ガランと音をたて、輝の持っていた空き缶がくずかごに入る。
『そうだね! 私ん家はまだ片付いてないから次回……』
『んじゃ、行こっか!』
輝は笑顔を見せ、立ち上がった……
『それにしても、まさか名古屋に来るとはね~』
輝の部屋にて、ビールを1缶ずつ手にして話す。
『待ってろって言ったのに、綾香ってば本当に男前~』
『待ってると時間が永く感じるんだもん。 おまけに就職も出来たし、一石二鳥じゃん』
『一石二鳥言うなっての!』
意地悪に笑う輝。
何だか、あの頃に戻ったみたい。
『でも、どうせ輝が推したんじゃないの? 私が来ること知ってたし』
こんな大手が受かると思ってなかったし。
コネで入ったってのは、少し嫌だけど仕方ないよね。
『他にもいっぱい受けるだろうと思ってたから、拍子抜けだよ』
『いや、俺は一切口出してないよ? 面接に来たのは知ってたけど』
『え……?』
『綾香の実力でしょ! 前の派遣でも頑張ってたし』
嘘。
嘘だぁ……
『そんな事ってあるのかな……?』
何だか信じられない。
『それに、俺が推したって、社長は使えない人材は採らないよ。 綾香を必要だと思ったんだよ』
『……嬉しい……』
まだ呆然とする私の額に、輝はコツンと指を弾いた。
『おめでとう、綾香……』