不器用なシタゴコロ

そして。しゃがみこむと。

寂しそうに笑った。





「―懐いてくれたトキに。
首輪をつけてきたんだけど…俺のトコ戻ってきてくれっかな…。
…赤と茶色の首輪」





そう言って。

自分の左手を振ったとーやクンの手首には。

黒と茶色のブレスレット。





…あのブレスレットって…。





「猫の名前は〜?」





私の後ろの方から飛んできた声に。

とーやクンが応えた。







「…ゆず」







…ズルい、ズルいよ。





とーやクンの手首に巻かれてるブレスレットは。

“当日つけておいで”と。

チケットと一緒に入ってたブレスレットの色違い。





私は。

とーやクンが“首輪”だと言ったブレスレットを。

ポケットの中でギュッと握りしめた。



 

< 243 / 340 >

この作品をシェア

pagetop