不器用なシタゴコロ
そして。しゃがみこむと。
寂しそうに笑った。
「―懐いてくれたトキに。
首輪をつけてきたんだけど…俺のトコ戻ってきてくれっかな…。
…赤と茶色の首輪」
そう言って。
自分の左手を振ったとーやクンの手首には。
黒と茶色のブレスレット。
…あのブレスレットって…。
「猫の名前は〜?」
私の後ろの方から飛んできた声に。
とーやクンが応えた。
「…ゆず」
…ズルい、ズルいよ。
とーやクンの手首に巻かれてるブレスレットは。
“当日つけておいで”と。
チケットと一緒に入ってたブレスレットの色違い。
私は。
とーやクンが“首輪”だと言ったブレスレットを。
ポケットの中でギュッと握りしめた。