不器用なシタゴコロ
足元から“それ”を拾った。
今、私の手のなかにある黒い無機質な“それ”は。
「…ケータイ…」
黒いケータイ。
ストラップも何もついてない。
シンプルなケータイ。
「…え、ちょっ…」
急いで彼の走っていった方向を見たけど。
見えるのは傘をさして歩く人が何人かだけ。
傘もささず走っていった彼の姿は見えなくなっていた。
彼は大事な物を落としたことに気付かないまま行ってしまった。
…これ…どうすればいいのよ…。
持ち主のいなくなった黒いケータイは。
音もたてず静かに私の手のなかにいた。
このケータイ1つ、拾ったことが。
これから先の私を変えていくことになるなんて。
今は思いもしないことだった。