この隙間、僕の存在。
その声と同時に再び騒がしくなる体育館。


「どうする? とりあえず俺等授業とかは関係ねーし」

その光景をただなんとなくボー……と、眺めていると樹裕が横で何やら瞳を輝かせながら自分の方を見て来た。

「……なんだよ」

俺がわざとらしくそう問えば。

「こんなときになんだけどさ、ちょっと街のほう探索したいなーって」

申し訳なさそうに切り出したその言葉とは裏腹に、やはりどこか俺の返事に期待を滲ませたような表情で俺を見つめてきた。


「本当、こんなときに……」

とは言ってみたものの、コイツは本来ならば此処に来る必要などなかった身なのだ。


俺がチラッと、樹裕の方を見ればまるで散歩を拒まれた飼い犬のような表情をしていた。


「っはは。なんだよ、その顔。冗談だよ、行こーぜ」
「え! いいの!?」
「あ? 行きたくねーの?」
「行く! すっげー行きてー!」


それからまたすぐにえさを与えられた子犬のようにはしゃぎだす。



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