1970年の亡霊
「……今回の銃撃事件、何処まで知ってんだ?」

「警察発表の他にって事なら、加藤さんが三山さんから連絡を受けて、機捜の後輩を川合俊子の部屋へ急行させたって事位ですかねえ」

 恐らく池谷はもう少し知っているだろう。

 何処まで惚けているのか、掴み処の無い奴だなと加藤は思った。

「……俺が三山警視から電話を受けた時、元部下の三枝が人を殺してしまったと聞かされたんだ。場所は、事故死した元部下の川合俊子の部屋」

「殺したと言っていたのに、実際には死体は存在していなかった……」

「俺は電話でそう聞いただけだ」

「本当は死んでいなくて、三山警視達が部屋を出た後、自力で逃げたとかは?」

「ありえねえな。鑑識の話じゃ、現場に残された血痕の量ははんぱじゃねえらしい。よしんばそいつが自力で逃げたんなら、アパート周辺に血痕が残るだろう。その形跡はゼロだ。それにな、凶器とされる物も、残ってねえんだ」

「そういえば、鑑識では誰かが運んだんじゃないかって見方をしてますよね」

「ふん、俺から聞く前に結構仕入れてんじゃねえか」

「裏付けは沢山あった方がいいですからね。しかし何者なんですか?」

「消えた死体か?それとも銃撃した人間の事か?」

「両方」

 加藤は知らないという素振りを見せた。が、実際には三山からの電話があった時に、殺してしまった相手は若い自衛官だと聞かされていた。

 その事から考えて行けば、襲った相手もその線の可能性はある。

 だが、この事はマスコミに流れていない。

 必要以上に情報を渡す気など、加藤にはなかった。


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