1970年の亡霊
 根元まで灰になったセブンスターを足下に捨てる。

 丁度その時、非常階段の扉が開いて、加藤が姿を現した。

「煙草のポイ捨てでパクってやろうか」

「お待ちしてましたよ」

「腹の探り合いは好きじゃない。単刀直入に済まそうぜ」

「君津海岸で首無し死体が発見された前日なんですがね……沖合で海上保安庁の巡視船が、一隻の不審船を見付けているんですよ」

「……」

「漁船でもない、はたまたレジャーボートとも違う小型船なんですが、沖合で何かを捨てたらしいんです。海上での不法投棄、若しくは麻薬の受け渡しの為の投下……そう睨んで巡視船が近付いたら……」

 そこで池谷は口を噤んだ。

「勿体つけないで先を話せよ」

「いやあ、つい調子に乗ってしまいましたよ。この先は、加藤さんからもネタを頂かなくちゃ」

 狡猾そうな笑みを浮かべる池谷に、加藤は吐き気を感じた。

「ガセを掴まそうとする奴程、勿体つけるって昔から言うぜ」

「そう思われるのでしたらお好きに……」

 池谷は焦らすように煙草を咥えた。

 加藤は、池谷が手にしたセブンスターをひょいと横取りし、一本抜き取り自分も咥えた。

 苦笑いを浮かべながら、池谷がその煙草に火を点けた。



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