1970年の亡霊
 成田と羽田が、爆破テロ後の警戒から使用出来なくなっていた為、国際線の殆どが関西空港を使用していた。

 空港ゲート周辺は、警備員以外にも警官の姿が多く見られ、物々しさに乗降客達の誰もが、顔をしかめた。

 ドバイからの直行便から、その男は降りて来た。

 精悍な顔つきと、蓄えた髭、そして褐色に焼けた肌。一見すると東南アジア系か中近東系に見える。空港職員などは何度もパスポートを確認したが、その男は紛れも無い日本人であった。男は空港ロビーのレストランに入った。

 その二十分後、カイロ発の直行便が到着した。

 まばらな乗客達に混じり、坊主頭の男が入国カウンターにパスポートを出した。

 職員が出国先を確認すると、イスタンブールとなっていた。男のパスポートには、トルコの他にアフガニスタンやイラクといった国の、出入国スタンプが押されてあった。

 特に問題も無く、男は入国カウンターを通過し、空港ロビーのレストランへ入った。

「予定より少し早かったな」

 テーブルへ近付いて来た坊主頭の男に、髭面の男が言った。

「さっき連絡したが、次の指示があるまではこちらの方で待機していろとの事だ」

「砂漠じゃなければ、何処でも構わないさ」

「暫くは軟らかいベッドの上でゆっくり出来る」

「ああ」

 二人の男は、それ以上語る事をせず、店を出ると別々のタクシーに乗った。


< 209 / 368 >

この作品をシェア

pagetop