1970年の亡霊
「朝岡さん、貴女に聞きたい事があるの。一緒に来て」

「は、はい……」

　有無も言わさぬ物言いに、朝岡由美子は怯えた。三山の後に付いて行くと、彼女のデスクではなく、同じフロアにある小会議室に入って行った。

「座って」

「はい……」

　口調の厳しさは変わらない。何か職務上でミスを犯したのだろうか？

　三山の険しい表情から、そう考えたが、朝岡由美子には心当たりが無かった。

「今から質問する事に、正直に答えて欲しいの。今年の春以降、貴女は特別なアルゴリズムを使ってあるコンピューターにアクセスしていたわよね？」

　質問というよりも、初めから決め付けるような口振りだ。

　朝岡は、殉職した下山課長から命じられていた極秘任務の事を思い出した。

「下山課長から命じられた任務の事というのであれば、確かに特定のコンピューターを監視しては居りました」

「下山課長？それ、本当？」

「はい。三山課長が資料室長へ異動されて直ぐに、極秘任務だから、私一人で行えと……」

「そう……。貴女が監視しろと命じられたコンピューターだけど、その所持者が誰だか判っていた？」

　幾分冷静になった三山は、知らないと首を振る朝岡の目をじっと見つめ、嘘ではないなと感じた。
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