1970年の亡霊
 爆死した下山課長からどういう指示だったのかを詳しく尋ねたが、結局朝岡は何も知らなかった。ただその中で、三山が不思議に思った点があった。

 それは、アクセスの際に使用したアルゴリズムが、下山課長から指示されたものであった事である。

「ねえ、下山課長は、貴女から見てコンピューターに精通している雰囲気だった?」

彼女は、自分に言った下山の言葉を思い出していた。

 私はコンピューターに疎くてね……

 この課へ異動して来てから、下山課長が特にコンピューターの技能習得をしていた話を聞いていない。

 一方で三山は、死んだ三枝や川合の話を思い出していた。

(今度の課長は、まるでネットの事とか知らないし、第一コンピューターそのものの知識がゼロなんですよ)

「文章の作成位かと……」

 恐る恐る答える朝岡由美子の表情は、それまで以上に蒼ざめていた。

「あ、あの……私、何かとんでもない事でもしてしまったのでしょうか?」

 三山は朝岡の質問に答えなかった。

「み、三山課長……」

「朝岡さん、戻っていいわ。後でもう一度同じ話をして貰う事になると思うから」

 そう言われ、朝岡は泣きそうな顔をしながら三山に背を向けた。

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