1970年の亡霊
 目的を達成させる為には、犠牲が付き纏うと理解している。

 しかし、避けられる犠牲は避けるのも軍人の本義ではないだろうかとも思っていた。

 鹿島二佐にもそう意見具申はしたが、結局予定通りミッションは決行される。

 果たして、更なる犠牲者達が必要なのであろうか。

 つい数分前に見送った予備自衛官達は、自分達がテロリストの盾となって、国家の安全を護れたと思うであろう。

 何も真実を知らされずに、端から殺されるだけの彼等。

 しかも、彼等の命を奪うのは我が自衛隊なのだ。

 習志野で、ホームレス達をテロリストに仕立て上げて死に至らしめた時とは別だ。

 我々をただの道具としてしか見ていない支援者。

 彼等は真の国防云々ではなく、自分達の利益でしか今回の事を考えていない。

 確かに、国防の充実には彼等の力が必要だ。

 園田は、実行部隊であるつるぎ会を以前から極秘裏に支援してくれている丸光重工名誉会長、岩根晋の赤ら顔を思い出し、

 いつまでもあなた方の言いなりにはなりませんよ……

 と、心の中で呟いた。

 園田はそんな思いに駆られながら、車をみなとみらい地区から国道16号線へと走らせた。



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