1970年の亡霊
「あんた、ほら……」
女に促されて佐川が加藤の前に来た。
「もう自分はシャブ弄っていませんよ。こうやって女房と細々と店をやっているんで……」
「そのようだな」
「すみません、散々加藤さんにはお世話になっていながら、ご無沙汰ばかりしていて」
女房らしい女がそう言って頭を下げた。
「別に大した世話もしてねえよ」
「旦那、わざわざこんな場末の店へ顔を見せたのは、どういった用件なんです?」
頼みもしないのに、女房が気を利かしてビールを差し出し、グラスへ注いだ。注がれたビールを一気に飲み干し、加藤は徐に口を開いた。
「お前の名前は絶対に出さない。タカハシと接触する手立てを教えてくれないか」
佐川は加藤を無視するようにして煙草を咥えて、ふうと大きく紫煙を吐き出すと、
「もう俺は関係無いんで……」
そう一言だけ言って再び黙りこくった。
「ぱくるつもりじゃないから、お前には一切迷惑は掛からねえ」
「……」
「俺を信用しろ」
「デカは信用しないんで……」
「この俺でもか?」
佐川は今にも朽ち果てそうな天井を見つめ続けた。
女に促されて佐川が加藤の前に来た。
「もう自分はシャブ弄っていませんよ。こうやって女房と細々と店をやっているんで……」
「そのようだな」
「すみません、散々加藤さんにはお世話になっていながら、ご無沙汰ばかりしていて」
女房らしい女がそう言って頭を下げた。
「別に大した世話もしてねえよ」
「旦那、わざわざこんな場末の店へ顔を見せたのは、どういった用件なんです?」
頼みもしないのに、女房が気を利かしてビールを差し出し、グラスへ注いだ。注がれたビールを一気に飲み干し、加藤は徐に口を開いた。
「お前の名前は絶対に出さない。タカハシと接触する手立てを教えてくれないか」
佐川は加藤を無視するようにして煙草を咥えて、ふうと大きく紫煙を吐き出すと、
「もう俺は関係無いんで……」
そう一言だけ言って再び黙りこくった。
「ぱくるつもりじゃないから、お前には一切迷惑は掛からねえ」
「……」
「俺を信用しろ」
「デカは信用しないんで……」
「この俺でもか?」
佐川は今にも朽ち果てそうな天井を見つめ続けた。