1970年の亡霊
 何だあいつは?

 狙撃用スコープの中に、ターゲットへ近付く男が入った。車の周りに居た警備員が男に気付き、駆け寄ろうとした。

 運転席からそれを見ていた要が、

「岡田!」

 と声を張り上げたのと同時に、彼は一弾目を放った。

 弾丸は狙い通り後部座席のウインドウを貫いた。

 すぐさまボルトを引くと遊底から薬莢が飛び出した。無駄の無い動作で二発目を装填し、初弾と同じ位置へ放った。

 次弾を装填し、スコープを覗くと、男がこちらへ銃を向けていた。

 要は車のギアを入れ、急発進させた。同時に岡田の放った三発目が男を仰け反らせた。

 岡田は64式狙撃銃を放り投げ、腰に挿していたグロックG19自動拳銃を引き抜いた。

「岡田、飛び降りろ!」

 そう叫んだ要は、SIG P228を両手に持ったまま先に運転席から飛び降りていた。

 要から一瞬遅れ、岡田が飛び降りる。

 無人のウォークスルーバンは、ビル正面に向かって直進して行った。

 無人のバンに銃弾が浴びせられていた。

 岡田の狙撃した男が拳銃を乱射している。男の目には飛び降りた岡田と要の姿が見えていないようだ。

 岡田と要は爆発に備えるべく、反対側のビルを目指し走った。

 バンが黒塗りの社用車に激突し、凄まじい衝撃音を響かせた。

 二人はビルの陰に身を寄せて、次に起こる衝撃を避けた。

 だが、それは起きなかった……。

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