1970年の亡霊
「ところで課長、あれ、普通の物取りや通り魔とは違いますよ」

「それ、どういう意味?」

「課長を助けようとしてあいつと取っ組み合ったんですが、幾ら僕が正規採用の警察官じゃないとは言っても、多少の逮捕術は訓練して貰っているんですよ。それが、赤子を捻るようにあしらわれたんです。奴と取っ組み合っている間、まるで逮捕術の教官にしごかれていたような気分でしたから」

 言われてみて三山もそういえばと頷いた。

 三山自身にしても、一般女性と比較すれば護身術に関しては長けている。

 だからこそ、寸前までは尾行者の気配を感じてもいた。

 が、全く持って歯が立たなかった。

 襲って来た男からは、鍛え上げられた鋼のような強さを感じたのも確かだ。

 単なる物取りや、猥褻目的の暴行ではないと、三山も感じてはいた。

 しかし、自分には襲われるような覚えが無い。

 考え過ぎかも知れない……

 偶然私が狙われただけよ……

「あっ、三山課長いらしゃってたんですか」

 思いを巡らしていた三山が声の方へ振り向くと、花を手にした川合俊子が立っていた。


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