―you―
 久しぶりの感覚だ。
「ちゃんと栄養にするんだろ?」
 俺はあなたの車の助手席に乗って、心地よい満腹感に浸っていた。
「はい」
「普段は何を食べているんだ?」
「オールドファッション」
「だけ?」
「あとミルクティー」
「だけ?」
「嘘です。自炊はしないこともありません」
「嘘は良くない」
「十河さんだけには言われたくないですね。その先の信号を右です」
 そうか、とあなたは笑ってハンドルを切った。

 何となく、あなたを部屋に呼んでしまった。
「必要最低限、な部屋」
 あなたは俺の部屋をそう例えた。基本的に物が少ない。
「どんどん色んなことをやるから、残したくないんです。過去の物とか」
「君は哲学家だな」
「そうですか?一番の理由は、節約ですけど。どうぞ」
 俺はお茶を出す。緑茶の産地にある実家から送って貰ったものだ。
「今日の奈緒は随分嬉しそうだった。よかったら、これからもちょくちょく来ないか?」
「え、いいんですか?」
「奈緒には帰ってから話すけど、多分賛成してくれるだろう」
「やった」
「そんなに旨かったか?」
「はい。お店で食べたらかなりの値段がしてもおかしくないくらい」
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