―you―
 ということで、今日もあなたの家に向かっている。何度目だろう。奈緒さんの料理は毎回メニューが違って、しかもおいしい。
 公演が始まり、ちょっとしたトラブルがあった。そのため予定の時間をかなり過ぎてしまった。あなたや奈緒さんの携帯電話やお宅に電話を掛けたが、繋がらない。今は電車にのってしまったので電話も出来ない。困った。

 それから電車を降りてバスに乗り、住宅地を進む。五つ目のバス停で降りた。少し歩いてあなたの家に着く。灯りは点いているので在宅のようだ。もう一度家に電話を掛ける。ベルは鳴るけど、やっぱり出ない。
 何だろう。俺は玄関のチャイムを押す。ピンポーン。返事はない。家にいないのかな。ノブに手をかけたら、動いた。何だ、いるじゃないか。

 俺はそれから、あんまり見たくなかったものを見た。あなたと奈緒さんは気づかなかったみたいだけど。それでよかった。
 その後、メールは送った。今日は行けません。ごめんなさい。
 あなたから返信。そうか。残念だな。何回も電話してくれたみたいで、出られなくて悪かった。また来いよ。
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